新年のご挨拶
平成28年の年頭にあたって
一般財団法人高齢者住宅財団 理事長 髙橋 紘士
明けましておめでとうございます。旧年中は多々高齢者住宅財団の事業にご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
当財団機関誌、「財団ニュース」はVol.130となる新年号からタイトルを「エイジングインプレイス」、副タイトルとして「高齢者の地域居住の推進をめざして」と改め、内容もリニューアルいたしました。
高齢者住宅財団の各種事業を貫く使命は、高齢者の方々が住みなれた住まいで生活を継続し、介護が必要となった場合でも、自己決定に基づき、自己の能力を活用し、人生の終幕まで活き活きと生活を送ることを支援するための、様々な環境整備に貢献することです。その意味で、「エイジングインプレイス」、すなわち「地域居住」の推進こそが、本財団の事業展開の目的であり使命であると考えます。
そのようなミッションを、財団ニュースのタイトルにも反映させることにいたしました。
それに伴い、内容も高齢者住宅をめぐる有識者による論考を益々充実させると共に、本財団が開催するセミナーの模様や、事業活動の紹介なども掲載し、本財団の活動をビビッドにお知らせしたいと考えております。
また、従来から掲載している鼎談等も、時宜に得たテーマを選定し自由に語り下ろした記事により、読者の皆様に最新の情報と論点を提供したいと考えております。
考えてみると、高齢者住宅分野の動きは目まぐるしく展開しております。いよいよ、後期高齢者人口が2,000万人を突破する2025年まで、あと10年を切りました。これを受け、医療介護をはじめする社会保障の領域では、「地域包括ケアシステム」の構築がキーポリシーとなり、各種の政策への取り組みが展開しております。
この政策展開は、高齢者の住まいのあり方に大きな影響を与えます。医療制度改革で予想される早期退院の促進は、退院後の居住先確保の問題がより焦眉の課題となることを示しております。
介護が必要な方々への居住環境の整備は、従来型の発想では問題が大きいことがはっきりしています。本人の自立を確保する支援の場はいかなるものであるべきか、改めて問い直す必要が起こっています。
一方で、空き家率の上昇も、これからの高齢者居住を考える上で重要な要因です。空き家の増加の一端において、介護が必要になり居住継続が困難となり施設への需要増がおこるという面も、無視できないからです。
高齢者向け住宅は、平成23年に策定された「住生活基本計画」において、高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を、平成17年の0.9%から平成32年に向け3〜5%にするという目標が提示されました。
現在この計画は見直し作業が行われ、今年中に新しい計画と目標が策定されることになっております。
高齢者住まい法の改正によって創設された「サービス付き高齢者向け住宅」は、上記の目標に依拠しながら整備が進められてきましたが、2013年の推計で高齢者向け住宅の整備は、対高齢者人口比1.9%の水準に達しました。今後この整備を適切に進めるためにも、そのあり方について国交省住宅局安心居住推進課で検討が進んでおります。その検討会に、私も座長として参画しております。昨年公表された中間まとめ提言を踏まえて、3月までに最終報告を取りまとめる予定です。サービス付き高齢者向け住宅の現状を踏まえ、高齢者の居住ニーズに応えることができるような環境整備を進めるための報告となります。
また、今後深刻化する国民年金層を中心とした居住確保、さらに格差の拡大のなかで、低所得者層や高齢者障害者等の居住安定と生活支援ニーズの拡大です。この課題について、既に本財団で厚労省からの老健事業による研究事業を踏まえ、厚労省老健局が低所得高齢者等の居住安定化のためのモデル事業で、全国11カ所にてモデル事業が展開されております。財団ではこの事業を、「地域善隣事業」という名称で、全国に普及するための啓蒙活動を展開しております。
さらに、27年度の老健事業で、急性期病院の退院支援にあたり、退院先の居住場所がどのような実態であるかという調査を実施しています。早期退院が進むと、医療的必要度の高い退院者の住まい確保も大きな課題になるからです。
本財団の中核的事業は、ボナージュ横浜および稲毛海岸のシニア住宅の運営や、家賃債務保証等の高齢者をはじめとする居住支援業務です。これらの業務については、関係各位の協力により、時代の要請に応える事業運営に取り組みます。
財団をとりまく環境は決して好転したとはいえませんが、役職員一同全力を挙げて業務に邁進したいと存じます。
変わらぬご指導、ご支援をお願いして、年頭の挨拶とさせていただきます。
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